今回の米国で起業し成功する方法の24では、2005年に結ばれた日米社会保障協定に基く、日米での年金の仕組みについて話します。この年金協定が結ばれる前は、
日本の企業から米国の子会社などの派遣された従業員も、日米の両国で社会保障制度に加入する必要があり、米国での滞在期間が短期の従業員は米国での社会保障の保険料が(ソーシャルセキュリティー)が掛け捨てになっていました。この社会保障協定はそのような二重払いを防ぎ、日米間の交流をより円滑にする目的で制定されました。
この協定の基本的な考え方は、日本と米国での両国での年金医療制度への二重加入の防止と日米両国での年金加入期間を通算し年金保険料の掛け捨てを防止しています。具体的には、日本の事業所に勤務する人などが、米国にある支店や駐在員事務所などに派遣される場合、両国の社会保障制度に二重に加入しなければならないことがありましたが、この協定により、いずれか一方の社会保障制度のみに加入すればよいことになりました。
協定の対象者は、原則として、その人が就労している国の社会保障制度のみに加入します。ただし、事業所から一時的(5年以内と見込まれる場合)に協定相手国に派遣される人は、引き続き派遣元の国の社会保障制度のみに加入します。例えば、日本の事業所から米国に派遣される人は、原則として米国の社会保障制度のみに加入することになりますが、派遣期間が一時的であれば、引き続き日本の社会保障制度のみに加入することになります。
(日本から米国に派遣される場合)
日本から米国へ行き、就労する人が加入する社会保障制度は、米国での就労期間により次のようになります。
- 日本の事業所からの派遣で、その派遣期間が5年以内と見込まれる場合は、日本の社会保障制度への加入
- 日本の事業所からの派遣で、その派遣期間が5年以上と見込まれる場合は、 米国の社会保障制度への加入
- 日本の事業所からの派遣で、その派遣期間が予見できない場合は、原則は米国の社会保障制度へ加入(申請内容により認められれば日本の社会保障制度への加入も可能)
- 米国での現地採用の場合は、米国の社会保障制度への加入
上記の考え方は、事業所で就労する人だけではなく自営業者にも適用されます。例えば、日本の自営業者が一時的に米国で自営活動を行うのであれば、引き続き日本の社会保障制度に加入することになりますが、長期的に米国での自営活動を行う場合は米国での社会保障制度に加入することになります。また、日本で自営業を行っていない人が米国で自営活動を行う場合は、米国での社会保障制度に加入することになります。
日本の社会保障制度に継続的に加入し、米国の社会保障制度への加入を免除されるためには、日本の社会保障制度に加入していることを証明する“適用証明”の交付を社会保険事務所から受ける必要があります。
なお、この“適用証明書”の交付を受けるためには、次の条件を満たす必要があります。
- 日本の年金、医療保険制度に加入していること
- 日本の事業所との雇用関係が継続していること(自営業者については、米国でも引き続き自営活動を行っていること)
- 派遣期間が5年以内と見込まれる場合であること(自営業者については、就労期間が5年以内と見込まれること)
- 米国に派遣される直前に、原則として6ヶ月以上継続して日本で雇用され就労していたこと
なお、日本で国民年金及び国民健康保険に加入していた人は、米国に住所を移すと国民年金の加入義務がなくなりますので、上記(1)の条件を満たすために、国民年金に任意加入する必要があります。ただし、国民健康保険には任意加入制度はないため、国民健康保険に加入していない場合であっても、上記(1)の条件を満たしているものとして取り扱われます。
(米国から日本に派遣される場合)
米国から日本に行って就労する人が加入する社会保険制度は、日本から米国へ来る人の場合と概ね同様の考え方によって取り扱われます。ただし、米国から日本に一時派遣される人が、米国の社会保障制度に引き続き加入する場合であっても、日本の年金制度への加入のみが免除され、医療保険制度への加入が免除されない場合があります。
理由は、米国の公的医療保険制度(メディケア)は現役時代には給付がされないため、日本の医療保険制度への加入が免除されると、日本での医療費支出に際して日米両国のいずれからも医療費給付が受けられないといった事態が生じます。このため、日本での医療費支出に備えて米国の民間医療保険に加入していることを条件に、日本の医療保険制度への加入が免除されることになっています。
また、配偶者や子供などが一緒に日本に滞在する場合には、その全員が民間医療保険に加入していなければなりません。もし、本人及び家族の中に民間医療保険に加入していない人がいる場合は、本人及び家族の全員について日本の医療保険制度への加入が免除されないことになります。
参考: 社会保険庁のホームページ
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